東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)140号 判決
一 前掲請求の原因のうち、本願発明につき出願から審決の成立、その謄本の送達にいたる特許庁における手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、右審決の取消事由の存否について判断する。
引用例に右審決認定のように高温の冶金炉(ただし、平炉)の耐火組成物が示されていることは当事者間に争いがない。
ところが、本願発明が複数個の炉を加熱した状態で同時に稼動させ交互操業する原告主張のような構成をとるものであつて、さような構成による転炉の交互操業が本願出願当時周知技術に属するものではなく、引用例にも開示されていないこと、本願発明がライニング上に予防的保護被覆を施すため噴霧を行う原告主張のような構成をとるものであつて、さような構成による予防的保護被覆が本願出願当時通常行われていた技術ではなく、引用例にも開示されていないこと、そして右審決が周知の事実であると判断した複数個の転炉を交互に稼動させる方法が原告主張のような長い周期による交互操業を指すものであること、右審決が通常行われていると判断したライニングの損耗又は破損の工程中における補修の原告主張のような対症的処置としての補修を指すものであること、本願発明が前記のような構成により、原告主張のように格段に顕著な作用効果を奏することは当事者間に争いがない。
してみると、右審決が本願発明をもつて引用例及び周知技術から容易に推考しうるものと判断したのは、本願発明における炉の交互操業及びライニングの保護被覆に関する構成の技術的意義を誤つて解釈するとともに、その顕著な作用効果を看過誤認したことによるものと考えるほかはないから、さような判断に基づき本願発明について特許を受けることができないものとした右審決は違法であるといわざるをえない。
三 よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。